無色の日の残像
工場を後にしながら、無色は二人にどこか行きたい場所はあるかと尋ねた。
「見てみたいのは【都】っていう高層都市だけど」
「島の外には出たら駄目なんだよね」
二人は目配せを交わして、「無色はどこに行きたい?」と聞いた。
「そりゃ、予定なら透明のところに行くはずだったけど」
「なら、透明のお見舞いに行こうぜ」
空気が言って、三人はまた蝉の声を聞きながら病院に続く坂道を登っていった。
「なあ、無色」
坂を登りながら、空気は無色に話しかけた。
「なに?」と、歩きながら無色が空気のほうに顔を向けた。
大きな瞳で見つめられると、空気は何を話して良いものかわからなくなってしまった。
つくつく法師が、やや前方にある木で鳴き始める。
ホウシ、ホウシ、ツクツク・・・・・・。
「いや、えっと、その、さ──お前さあ、いつからパイロットやってるの?」
「実戦は十二歳から」
「えっと、じゃあさ──仲良い奴とかは、いるワケ?」
「いるよ。透明が」
ツクツクホウシ、ツクツクホウシ。
「・・・・・・透明以外に──軍の中なんかは?」
「いない」
「いないって──一人も?」
「一人も」
空気は、愕然として、少女の小さな肩を眺めた。
ツクツクホウシ、ツクツク──。
ジジッと短い声を出して、つくつく法師が飛び去ってゆく。
「見てみたいのは【都】っていう高層都市だけど」
「島の外には出たら駄目なんだよね」
二人は目配せを交わして、「無色はどこに行きたい?」と聞いた。
「そりゃ、予定なら透明のところに行くはずだったけど」
「なら、透明のお見舞いに行こうぜ」
空気が言って、三人はまた蝉の声を聞きながら病院に続く坂道を登っていった。
「なあ、無色」
坂を登りながら、空気は無色に話しかけた。
「なに?」と、歩きながら無色が空気のほうに顔を向けた。
大きな瞳で見つめられると、空気は何を話して良いものかわからなくなってしまった。
つくつく法師が、やや前方にある木で鳴き始める。
ホウシ、ホウシ、ツクツク・・・・・・。
「いや、えっと、その、さ──お前さあ、いつからパイロットやってるの?」
「実戦は十二歳から」
「えっと、じゃあさ──仲良い奴とかは、いるワケ?」
「いるよ。透明が」
ツクツクホウシ、ツクツクホウシ。
「・・・・・・透明以外に──軍の中なんかは?」
「いない」
「いないって──一人も?」
「一人も」
空気は、愕然として、少女の小さな肩を眺めた。
ツクツクホウシ、ツクツク──。
ジジッと短い声を出して、つくつく法師が飛び去ってゆく。