無色の日の残像
「ああ、今日もコスモス摘んで行ったほうがいいかな」
そんな風に独りごちながら、無色は黙々と歩みを進めている。
「コスモスだけが花じゃないんだぞ」
「え?」
「花なら、他にもいっぱい咲いてるだろ」
空気は、無色の足もとを指さした。
「そこにもさ、ほら、あっちにだって、咲いてるだろ」
「・・・・・・本当だ」
無色は驚いたように、周囲を見回して目を大きくした。
「気づかなかった」
「気づけよ!」
空気は自分でも意識しないうちに大声になっていた。
「どうして素通りしちまうんだよ。お前、本当に何にも見えてないのか?」
少し後ろを歩いていた羽海が、びっくりして立ち止まっている。
目を丸くしている無色に腹立たしさのような──苛立ちのような──もどかしさを感じて、空気は堪らない気分で吐き出した。
「花の色くらいちゃんと見えるようになれよ、無色」
そんな風に独りごちながら、無色は黙々と歩みを進めている。
「コスモスだけが花じゃないんだぞ」
「え?」
「花なら、他にもいっぱい咲いてるだろ」
空気は、無色の足もとを指さした。
「そこにもさ、ほら、あっちにだって、咲いてるだろ」
「・・・・・・本当だ」
無色は驚いたように、周囲を見回して目を大きくした。
「気づかなかった」
「気づけよ!」
空気は自分でも意識しないうちに大声になっていた。
「どうして素通りしちまうんだよ。お前、本当に何にも見えてないのか?」
少し後ろを歩いていた羽海が、びっくりして立ち止まっている。
目を丸くしている無色に腹立たしさのような──苛立ちのような──もどかしさを感じて、空気は堪らない気分で吐き出した。
「花の色くらいちゃんと見えるようになれよ、無色」