無色の日の残像
 病院の外泊許可はあっさりとれた。
 透明は慢性的に体が弱ってはいるものの、一時も医師の目が離せない容態というわけではないようだ。

 戻って雨鳥に話すと、ノリの良いマスターは二つ返事でオーケーしてくれた。


 その日の夜、空気はベッドに潜り込んでもなかなか眠れなかった。
 明日のパーティーのことや、二人の少女たちのことが頭の中をぐるぐる駆け巡り、結局空気は部屋を抜けだして外へと出た。

 浜辺を散歩していると、誰かが波打ち際に立っているのが見えた。

「空気?」と、声をかけてきたのは、軍服の鋼鉄少女こと無色だった。

「何してるんだ?」
 空気が歩み寄りながら尋ねると、無色は足もとの波を指さした。

「海を見てたんだ」

 夜光虫の光で、波間は青白く輝いている。

「やっとわかったよ。綺麗だね」

 そう言う無色に、空気は少しほっとしたような、嬉しいような気分になった。

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