無色の日の残像
 無色の体はガリガリに痩せていて、彼女の歳なら少しはあって然りの胸の膨らみも全くわからなくて、こうしてそばにいても男の子のように見える。

「なあ、無色。お前どうして自分のこと『僕』って言うんだ?」

 並んで青白い海を眺めながら、空気は尋ねた。

「女の子──なのにさ」

 もちろん、世の中には自分のことを「僕」と呼ぶ少女もいる。
 だがどこか幼さを感じさせる多くの少女たちの「僕」という響きと、無色のそれは決定的にどこかで違っている。

「僕は透明を守らなければならないから」
 無色は迷いなく即座に返答を返した。

「そのために、透明の笑顔を守るために、戦うって決めたから」

 その眼差しを真っ直ぐ夜の水平線に向けて、軍服の少女は言った。

「だから僕は、女の子なんて捨てたんだ」
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