Magician Song〜魔術師の唄〜
「…行け。父さんの強さは知ってんだろ?こんくらいのことじゃ、死にたくても死ねない。…後からちゃんと、父さんも行くから、な?」
よしよしと宥めるように頭を撫でられ、リアは唇を噛み締める。
――足手まとい。
その言葉が、リアの頭の中に浮かび上がった。
父が、そういうつもりで言ったわけではないと、知っている。
だが、ここに残って戦えば、父の足手まといとなることは確かである。
「…っ…わ…かった…」
一緒に戦わせてという言葉をギリギリで飲み込み、リアは意に反した言葉を返した。
声が、震えてしまう。
父は、当然のことを言っているだけだというのに。
そんなリアの心情に気付かず、肯定の言葉を耳にした父は、安堵したようにほっと息をついた。
だがそれは、すぐに剣呑な表情に変わる。
「おぉーい、もーういーいかぁーい?」
この部屋の近くで、声がしたからだ。
その間延びした声音が、リビングから聞こえる。
おそらくここにいるのがばれるのも、時間の問題だ。
すると。
床に片膝をついた父が、小さくリアの名を紡いだ。
呼ばれたリアは、父に視線を向け、ぱしぱしと目をしばたたかせた。