Magician Song〜魔術師の唄〜
 
 
「…行け。父さんの強さは知ってんだろ?こんくらいのことじゃ、死にたくても死ねない。…後からちゃんと、父さんも行くから、な?」
 
 
よしよしと宥めるように頭を撫でられ、リアは唇を噛み締める。
 
 
 
――足手まとい。
 
 
 
その言葉が、リアの頭の中に浮かび上がった。
 
 
 
父が、そういうつもりで言ったわけではないと、知っている。
だが、ここに残って戦えば、父の足手まといとなることは確かである。
 
 
 
「…っ…わ…かった…」
 
 
 
一緒に戦わせてという言葉をギリギリで飲み込み、リアは意に反した言葉を返した。
 
 
声が、震えてしまう。
 
父は、当然のことを言っているだけだというのに。
 
 
そんなリアの心情に気付かず、肯定の言葉を耳にした父は、安堵したようにほっと息をついた。
 
 
だがそれは、すぐに剣呑な表情に変わる。
 
 
 
「おぉーい、もーういーいかぁーい?」
 
 
 
この部屋の近くで、声がしたからだ。
 
 
その間延びした声音が、リビングから聞こえる。
 
おそらくここにいるのがばれるのも、時間の問題だ。
 
 
 
すると。
 
 
 
床に片膝をついた父が、小さくリアの名を紡いだ。
呼ばれたリアは、父に視線を向け、ぱしぱしと目をしばたたかせた。
 
 
 
< 18 / 19 >

この作品をシェア

pagetop