私があなたであなたが私!?




薫さんは上着を脱ぎながら言った。



「うちの親父はとんだ酒のみでさ、仕事もしないで、ほかの女と遊んでるんだよ。だからめったに帰って来ない。お金が尽きて俺達からもらう時以外」



そう言うと薫さんは私を見て苦笑した。



「親父の収入だけじゃやっていけないからって優が言ったあれは嘘なんだ。他人にこういう身内の恥を話すのはあいつも気が引けたんだと思う」



私は言葉を失った。



私、てっきりお父さんも働いていて、三人でしっかり家計を立ててると思ってた。



でも実際は本当に二人で生活してきたんだ。



それに帰ってきたと思ったら二人が働いたお金を持って行くなんて…



何でそんな事…



私の顔が悲しそうになった事に気付いたのか、薫さんは微笑みながら言った。



「でもね、あの人も本当は優しい人なんだ。いつからか急に変わってしまったけど……。俺は本当に優しかった親父を知っているから」



薫さんは優しい表情になると、「でも優はあの人と全然話そうとしないんだけどね」とまたも苦笑した。
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