アザレアの花束を
「貴方はそう思うのね。……愛しい人と同じ生き物に、と」
海さんの言う台詞の意味がよくわからずに、ただ黙っていると、彼女は今までとは違う口調で言った。
「私は貴方を止めるわよ」
「……海さん!」
「だけど、どうせ貴方は行くのでしょう? 彼女のもとへ」
力尽くで止めることはできるのに、そうしてはいけない、というような感情が俺の心の中に流れてくる。
どうしようもできないやるせなさに、顔を歪める海さん。
しかし、俺はここで引き下がるわけにはいかなかった。
「行きます。海さんと玲さんが止めても」
海さんは俺を見て、微笑むと優しい口調で言った。
「……純粋ね」
そして、懐かしむようにこう呟いた。
「私も貴方みたいに純粋だったら、あんなことにはならなかったのにね……」
そう言って、静かにひとつぶの涙を流した。