キミは許婚
「電話、早く出ろよ」
「え? あ、あたし?」
「俺のはここにある」
思わぬ聖の呼びかけに、あたしが顔を上げると、聖は胸ポケットから携帯を取り出して見せた。
そして腕時計で時間を確認する。
「時間だ。爽が迎えに来たんだろう」
「柚野さん!? 早く出なくちゃ!」
あたしは床に置いた鞄を取りに行こうと慌てて聖から離れた。
聖の腕から離れただけというのにひどく涼しく感じられる。
通話ボタンを押す前に電話の画面を確認すると、ここに着いてから丁度二時間後だった。