キミは許婚
窓に張り付くあたしを見て柚野さんが車を止める。
「どうかしましたか?」
「あ……いえ……その……」
哲太の元へ行こうか、ちょっと迷う。
何故か聖と会った後、という後ろめたいような恥ずかしい気持ちもあるし、哲太への気持ちもわからないままだし……。
「迷っていらっしゃるようでしたので。この際ハッキリされてきてはどうですか?」
「ゆ、柚野さん! 何か知ってるんですか!?」
「いいえ、何も。ただ私は細かいことにも気がつく、よく気が利く秘書ですので」
あたしはその心が籠っているかどうか掴めない微笑に後押しされるように車を降りた。