キミは許婚
焦るあたしに対して、聖は落ち着いていて、逃げた……と言葉にした割には、清々しい顔をしている。
「今の会社で社長の座を奪い返すではなく別の道を選んだ。競争から逃げたとおっしゃりたいんでしょう。
しかし俺は……逃げたと言われても、腰抜けと言われても明さんとの約束を守りたかった。
ここからが本当の勝負です。認められないなら認められるまで、頑張るつもりです」
父を見据えて言い終えた聖に、あたしはまた疑問が浮かぶ。
「どうしてここまで……?」
あたしにこだわるの?
こだわってくれるの?
どうしてあたしを好きになってくれたの……?
それは、随分前から思っていたことで、聖が音信不通になる前、自分で説明すると柚野さんに口止めをしていたことだった。