テディベアは裏切らない
そんな私と一緒にいれば、彼女もきっと、もっとたくさんの友達ができると思った。好きな本を語り合える友達や、一緒に遊びに行ける友達や、好きな男の子の話をできる友達だって、増えると思った。

私の計画は、ちゃんと成功したんだ。彼女はクラスに打ち解けていって、友達も増えて、ひとりでいることのほうが少なくなった。

笑顔も、とても増えた。教室のどこにいるのかわかるくらい、声もよく聞くようになった。明るくなった。私は嬉しくなって、とても嬉しくなって、彼女に「よかったね」と言った。彼女も「うん、最近、すごく楽しい」と答えてくれた。

だけど、それからふっと寂しそうに、表情を消してこう呟く。

「でも、あの頃の私はもう、いなくなっちゃったや」

「え?」

唖然としたのを、覚えてる。

「友達、増えたよ。でも、本を語り合える友達ばっかりじゃない。小百合みたいな子ばっかりじゃない。あの頃みたく、ひとりで本を読む時間も、減っちゃった。……ときどき思うの。私は変わったっていうより、あの時の自分が、死んじゃっただけなのかなって」

私は、彼女の手を引いて、明るいところに連れ出したと思っていた。

だけど、そうじゃないことを思い知った。

彼女は日の光に耐えられなくて、一度燃えてしまったんだ。だけど、彼女はそこにいるんだから、日の光の下でも耐えられる自分を作らなくちゃいけない。

死んでしまった自分の代わりに、今までと違う自分を。
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