テディベアは裏切らない
許された私は、私じゃない。あの日あの時、彼女と一緒に死んでいった私の残滓。あの時の私は弱いから、まだ、たぶん、呆けているんだろう。だから状況も読めないまま、許して、許して、許してと、私も抱き締めて私も抱き締めて私も抱き締めてと、私が抱き締めている彼女のすぐ横でしくしく泣いている。
泣いている私に与える砂糖菓子はまだ、完結できそうにない。夏休みがおわっても、完結できるか、まだ、不安だ。
「海に行きたいわ」
とレナちゃんが言った。
「ほたるの追試も終わったことだし、ね、夏休みの計画立てよ。ほかの子たちはよそのお祭り行くとか、泊まりでどっか行くとか、いろいろ話してんだよね。私らちょっと乗り遅れてるよ。だれかのせいでね」
「悪かったな、だれかが赤点追試で」
笑いはしたものの、あまり乗り気じゃなかった。小説を完成させたかった。
物語の中には、二人の少女がいる。もちろん、名前は変えているけれど、私と彼女。そこへもうひとりの少女がやって来る。それは、今の私だ。今の私は、かつての私に助言をする。過去の私は、その助言を受けて、彼女への対応を、かつて私がしたとは違うものへ変えていく。そうしたら彼女も、同じ結末にはならない――大まかにはそういう物語だ。だけど、いつも、どうしても煮詰まってしまう。だって、何度書いても何度書いても納得できない。いや、納得しようがない。結局私は、なにもわかっていないんじゃないかって思うから。小説の中で私は何度か、彼女が幸せになる物語を描いた。そして彼女が私に、「アナタに逢えてよかった、ありがとう」と言ってくれる結末を。だけれど、それがすべて、引きずり出した「ありがとう」だと自覚するたびに、私は物語を削除した。
泣いている私に与える砂糖菓子はまだ、完結できそうにない。夏休みがおわっても、完結できるか、まだ、不安だ。
「海に行きたいわ」
とレナちゃんが言った。
「ほたるの追試も終わったことだし、ね、夏休みの計画立てよ。ほかの子たちはよそのお祭り行くとか、泊まりでどっか行くとか、いろいろ話してんだよね。私らちょっと乗り遅れてるよ。だれかのせいでね」
「悪かったな、だれかが赤点追試で」
笑いはしたものの、あまり乗り気じゃなかった。小説を完成させたかった。
物語の中には、二人の少女がいる。もちろん、名前は変えているけれど、私と彼女。そこへもうひとりの少女がやって来る。それは、今の私だ。今の私は、かつての私に助言をする。過去の私は、その助言を受けて、彼女への対応を、かつて私がしたとは違うものへ変えていく。そうしたら彼女も、同じ結末にはならない――大まかにはそういう物語だ。だけど、いつも、どうしても煮詰まってしまう。だって、何度書いても何度書いても納得できない。いや、納得しようがない。結局私は、なにもわかっていないんじゃないかって思うから。小説の中で私は何度か、彼女が幸せになる物語を描いた。そして彼女が私に、「アナタに逢えてよかった、ありがとう」と言ってくれる結末を。だけれど、それがすべて、引きずり出した「ありがとう」だと自覚するたびに、私は物語を削除した。