テディベアは裏切らない




「君、病んでるね」

と言って、彼女が来た。彼女がその言葉を言う相手はたいてい、本当に病んでいるし、心の傷を負っている。私だって、たしかに該当する。けれど私には彼女への耐性がある。

だから、

「また男子の制服を着てるの、ユウちゃん」

と切り返すのに、半秒もかからなかった。ユウちゃんは苦笑する。彼女は「病んでるね」という核心を突いた言葉で相手をきょとんとさせ、その隙にいろいろ言って、お得意の『できた』笑顔で翻弄して、手を掴んで裁縫部へ連れ込むのを常套手段にしてた。もっとも、それを熟知している私には、効果がないのだけど。

彼女もそうとわかっているから、私の手を急に取ることはせず、前の席に座った。そこはレナちゃんの席だけれど、彼女は今、いない。ほたるちゃんもいない。どこに行ったかは知らないけれど、そのタイミングを見計らってユウちゃんが来たことくらい、わかる。

裁縫部は、そういうタイミングを計るのだけはやたらめったら上手だから。

「……壮馬くんが痺れを切らしてるの?」

自分で作ったサンドウィッチにかぷりつきながら訊ねると、ユウちゃんは溜め息を漏らした。

「そんなの、聞かなくたってわかってるくせに」

「……うん」
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