学び人夏週間
どうしよう。
小谷先生とのこと、聞くべきだろうか。
いや、でも小谷先生の片想いだってわかってるんだから、私があえて話題にする必要はないはずだ。
あれ? 彼女の片想いだなんて、誰が決めたの?
俊輔は私と付き合っているけれど、気持ちが揺れて小谷先生に傾いている可能性だって大いにあり得るのだ。
私はどうすべきか決めあぐね、彼と目すら合わせずに机や椅子の位置を調整する。
「佐々木先生」
仕事モードで私を呼ぶ俊輔。
いつもと違うから少し緊張する。
「はい」
「松野のことなんだけど」
「松野?」
何かあったのだろうか。
松野の担当は私なのだから、私がしっかりしなくては。
私の意気込みをよそに、俊輔は突然ニヤリと口角を上げた。
「実はさ、俺のとこの飯島(いいじま)といい感じなんだよね」
「は? どういう意味」
ていうか飯島って誰?
廊下から部屋へ戻る生徒の話し声が聞こえてきた。
俊輔は私たちの話が彼らに聞かれないよう、グッと距離を縮めて小さな声で告げる。
「だからぁ。松野と飯島が、くっつきそうってこと」
ああ、いい感じってそういうこと……。
「みなみ塾って、生徒の恋愛事情にも口出すの?」
「口なんて出さないよ。生徒たちの様子を見てれば、そういうのも見えてくるじゃん?」
確かに、自分がふだん勤めている塾ではそうだ。
だけどみなみ塾においては、私にはまだまだ見えてこない。