学び人夏週間

小谷先生は、もう2年以上みなみ塾に勤めている。

まだベテランとは言えないが、私なんかよりよっぽど経験のある優れた講師という雰囲気があり、話す言葉には説得力がある。

胸をくすぐる憧れの感情。

俊輔とて、彼女の魅力を知らないわけではないだろう。

不安が混じり、一気に胸が重くなる。

思えば私だって、自分が感情を露にすれば小谷先生と衝突必至の危ういところにいるのだった。

彼女と上手くやらなければならないから、不満や不安を飲み込んでいるだけ。

いつからそれができるようになったんだっけ。

彼女たちに教えてあげられたら、解決するかもしれないのに。

それができないのがもどかしい。

抱えている悩み。

実現したい希望。

解決したり、実現させたりするには、学力では測りきれない人としての何かが必要だ。

この合宿に、そういう要素まで含まれているなんて……。

私は講師として、とても重要な大役を任されているのかもしれない。

やっぱりこの塾は、すごい。

南先生や小谷先生の話に深みを感じる理由がわかってきた。

無口な田中先生だって、ミステリアスで魅力があるし。

俊輔は……ヘラヘラして頼りなく見えるけど、本当は頼ったときはきちんと応えてくれるってことを、私は知っている。


< 81 / 200 >

この作品をシェア

pagetop