学び人夏週間

「じゃ、先生。おやすみなさい」

「おやすみ」

松野は私に笑顔を見せて、国語部屋を出ていった。

部屋にはあの二人がいる。

消灯は午後23時。

これからどのようにして過ごすのだろう。

どうか早く仲直りしますように。

雨が窓にパラパラ当たる音がして、ふと窓を見る。

外は大雨。

台風が本格的に猛威を振るってきている。

「私は私の仕事をしなくちゃね」

まずはこの部屋の掃除だ。

重森が使っているうしろの長机に、彼のカラフルな筆箱やその他教材が乗っている。

それらを軽く揃え、ゴミやホコリを落とすように乾拭き。

一方で松野が使っている方の机には、何も乗っていなかった。

こっちの机も乾拭きして、床を掃き、ゴミを捨てる。

風でガタガタ窓が揺れ、なんとなく不安な気持ちになって、私は少し急ぎぎみに南先生の部屋へと向かった。



「お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

毎晩恒例、南先生の部屋での講師ミーティング。

合宿も折り返し。

休みなく勤務する講師一同にも、少しだけ疲れの色が滲む。

私も同じだったのか、俊輔が私を労うように、他の先生たちに見えないところで一瞬だけ手を握ってくれた。

愛しさが募る。

またこっそり二人で会いたいが、あいにくの天気。

今夜は外へ抜け出すのは無理そうだ。

「明日は台風が直撃するみたいですから、朝のラジオ体操は中止します。台風は明日のうちに去って、雨も止んでくれるそうですから、バーベキューは明後日実施しましょう」

「はい」

今夜の点呼は小谷先生の担当だ。

生徒全員が揃っていることを確認し、それぞれ寝泊りしている部屋へ戻る。

布団を敷いて中へ潜り込むと、ポケットに違和感があった。

メモだ。

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