エージェント・レイ‐狂人の島‐
どうすればいいのかわからないまま、私は膝を抱えて蹲る。

と。

「……!」

建物の陰の、更に奥。

狭い路地の暗がりから、声が聞こえてきた。

呻くような声。

しかし、暴徒のような唸り声とは違う。

何と言えばいいか…苦痛に悶えるような声。

完全に自我を失った、そこらを徘徊している人々とは、どこか違う声のような気がした。

…少し考える。

路地の奥に行くべきか?

もしかしたら私以外にも正常な人間がいるのかもしれない。

でも…もし、さっき襲われたのと同じ暴徒だったら…?

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