吸血鬼と紅き石
その途端、胸に抱えていた少女の姿が消え、リイエンの前に残ったのは僅かな輝きを見せる、小さな光球のみ。

「俺の力添えがあって、初めて姿をとれる魂魄風情が…」

いきがるな、とまるでリイエンを守ろうとするかのようにその小さな光はリイエンと男の間に立ち塞がった。

パチン、と男が再度指を鳴らすと、小さな電流がいくつも魂魄の中を駆け巡った。

電流を受けてその光が小さく、淡くなっていく事に気付き、リイエンは魂魄に声を掛けた。

「ダメよ、ターニャ!」

このままではターニャの魂魄は男に消滅させられてしまう。

魂魄はそんなリイエンを振り向き、大丈夫だとでも言うように小さく瞬いてみせた。

そうしてふわりと宙を漂うと、空間に空いた僅かな亀裂を見つけ出し、その隙間から外へと抜けて行った。


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