吸血鬼と紅き石
「ウフフ、間抜けね」

引き摺り込まれた異空間の中、目の前で美女が嫣然と笑う。

「私が後にいる事位、あなたには予測が付いてなかったの?」

赤い唇が蠱惑に笑む。

長く黒い髪を肩先から跳ね除けて女が笑う。

吸血鬼は何も男ばかりではない。

男性に比べれば圧倒的に少ないが、女性も存在するのだ。

人と同様に、男よりも女の吸血鬼の方が、厄介だと言われる。

しかも目の前にいるのは自分が知る限り、最も厄介で危険な女。

「リイエンを…アイツをどこへやった?」

迂闊だった。

この女がいるのなら、もっと策を練るべきだったのだ。

あのザーディアス一人だけだと思い込み、さっさと片を付けようとみすみすリイエンごと罠に掛かってやったのが悔やまれる。


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