吸血鬼と紅き石
灰銀の色彩を身に纏う、圧倒的な力を持つ吸血鬼の青年。

彼を信じたいのに、怖くて怖くて堪らない。

どうすればいいのか、分からない。

(リイエン)

己を呼ぶあの声を、自分を見つめる優しい瞳を、信じて良いのか分からない。

「…あたしは、どうしたら…」

力無い呟きがリイエンの口から滑り落ちる。

震える手をキツく、キツく握り締めて。

脳裏に浮かぶ彼を消すように両の瞳を閉じる。


ザワリ。

空間が笑い声に似た歓喜に震えるのを知る者はまだ、いない。


< 96 / 263 >

この作品をシェア

pagetop