アオイハル
「聖愛ちゃーん♪」



集会が行われる講堂へと移動する最中、私を呼ぶ声が聞こえた。



その方へと顔を向けると、栄依子様が小走りで駆け寄って来るのが見えた。



僅かではあるけど、スカートが翻っているのを先生方に見つかったら注意されるのに…。



とはいえ、意見するわけにもいかない。



栄依子様が2年生だというのもあるけど…。



「げーんき?」



話しかけるのと同時に、栄依子様は私の左腕に絡みついた。



先日、兄のことで文句を言われ困っていた私を助けてくださってからというもの、何かにつけて栄依子様は私に声をかけてくださる。



心配してくれているんだと思うと、廊下を走るなとは言えない。



「おかげ様で…。」



私が軽くお辞儀をすると、右隣から非難めいた言葉が飛んだ。



「下級生の模範となる先輩が、なさる行動とは思えませんわね。」



翠子は、相手が先輩でも構うことなく言うべきことは言う。



それが翠子の性分なのか、学園でも一目置かれる家柄による自信なのかは定かじゃないけど。



「アハ、ちょっとでも長く聖愛ちゃんのそばにいたくてぇ。」



悪びれる様子もなく言う栄依子様に、翠子はため息をつく。



「聖愛さん、先に行きますわね。」



それだけ言うと、翠子はスタスタ行ってしまった。



「黄金(コガネ)の姫様って、コワイわね。」



栄依子様は私の腕に絡みついたまま、耳打ちする。



今の翠子の口調は、いつもよりキツイ印象を受けた。



だから私は、その言葉に苦笑するしかなかった。



ふと周りに視線を向けると、上級生らしき方々の私たちを睨むような目が気になった。



騒がしかったの…かな?






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