アオイハル
梨香に教わりながら作ったマドレーヌを手に、紫宝院様が通うお寺へ向かう。



『できるだけ早いうちに、紫宝院様に本当のこと言った方が良いと思うよ。』



梨香の言葉が、頭をよぎる。



嘘ついちゃいけないのは分かってる、けど…。



放課後すぐに向かった今日は私の方が早く来たみたいで、私の姿を見かけた紫宝院様が駆け寄ってくる。



「まさか、本当に来てくれるとは思わなかったな…。

これから稽古あるから、これは後でいただくよ。」



そう言いながら紫宝院様はマドレーヌを受け取り、お寺へと向かおうとする。



今日は、このままさよならなの?…嫌だ。



「終わるまで待っていては…いけませんか?」



「待つ…って、ここで?

また襲われたら敵わないんだけど…。」



「紫宝院様のお稽古、見学してはいけませんか?」



図々しいことを分かった上でお願いしてみた。



「別に良いけど、見たところで面白くないと思うよ。」



断られなかったのをいいことに着いて行くと、道場みたいなところに向かった。



紫宝院様は先生の許可を取り付けてくださったようで、私が中に入るのを許された。



普段全くしないから辛いのだけど、こういう場所だと正座が妥当…かな。



壁沿いに座ってから少し経って、支度を終えた紫宝院様が現れた。



道場の中央で刀らしきものを振り回しているのに最初は面食らったものの、真剣な姿にときめいた。



稽古後に聞いた話だと、抜刀術というものらしい。



優男の風貌をした兄ではサマにならないけど、紫宝院様だと粗暴に見えず素直に素敵だと思えた。





< 22 / 26 >

この作品をシェア

pagetop