恋戦(コイイクサ)
「大丈夫…」

ポツリと返された一言に、私はほっと胸を撫で下ろした。

「抱きついちゃって、ごめんね」

「いや、大丈夫。助かった」

助かったと言う新堂くんに、私は驚いた。

少し首を傾げた私に気付いたのか、困った様な顔をして、「あのままだったら、突き飛ばしてしまうかもしれなかったから…」と言う。

きっと、逃げ出すことも出来たはずなのに。

どうして、あの場から逃げなかったのだろう。

「佳世ちゃんが、ごめんね。佳世ちゃん、新堂くんの事知らないから…」

私たちと違う高校に通っている佳世ちゃんが、新堂くんの事を知っているわけなかった。

謝る私に新堂くんは眉を下げて少し笑う。

「その為の“彼女”でしょ?莉寿は、他の女から俺を守ってくれるんでしょ?」

「………そうだね」

私はアレルギーを治すだけじゃない、新堂くんを守ってあげないと駄目なんだ。

笑った私に微笑んだ新堂くんのその表情は、今まで見たなかで一番“笑っている顔”だと思った。



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