月の夜 ~短編~
そんな思いが脳裏をかすめた、その時だった。

彼女は、大きくそびえる、影のような建物の中へ入って行った。
灯りの少ない、古めの、マンション。


家、なの、だろうか。


何をしたわけでもないのに、ほっと安堵の息が漏れた。

彼女はきっと、帰ったのだ。


良かった。


心底、思う。
なのに、反面……。

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