夢みる蝶は遊飛する
そして迎えた“紅の魔女”としての最後の試合、つまりは全国大会の決勝。
紅いユニフォームに身を包んだ私は、2階席から応援する両親を見つけた。
すべては、期待を裏切らないために。
試合はもちろん、序盤から皇ヶ丘が優勢だった。
そのまま最終クォーターにもちこみ、残り時間は60秒を切っていた。
私の右脚は、そのときすでに感覚がなかった。
自分の足で立っているのか、それさえもわからないほどに、痺れるような痛みが広がっていた。
痛みを押し隠し、サポーターを巻きなおすふりをして盗み見た膝は、腫れ上がっていた。
それでも走った。
幸せな毎日と、輝かしい未来のために。
試合終了3秒前。
私にボールがまわってきた。
“紅の魔女”としての私の最後のシュートは、得意の3ポイントシュートだった。
『撃て!』
そんな叫び声が聞こえる前に、ボールは私の手を離れていた。
回転しながら宙を舞うボール。
その軌跡を見ながら、私は着地した。