夢みる蝶は遊飛する

そして迎えた“紅の魔女”としての最後の試合、つまりは全国大会の決勝。

紅いユニフォームに身を包んだ私は、2階席から応援する両親を見つけた。

すべては、期待を裏切らないために。



試合はもちろん、序盤から皇ヶ丘が優勢だった。

そのまま最終クォーターにもちこみ、残り時間は60秒を切っていた。

私の右脚は、そのときすでに感覚がなかった。

自分の足で立っているのか、それさえもわからないほどに、痺れるような痛みが広がっていた。


痛みを押し隠し、サポーターを巻きなおすふりをして盗み見た膝は、腫れ上がっていた。

それでも走った。


幸せな毎日と、輝かしい未来のために。



試合終了3秒前。

私にボールがまわってきた。

“紅の魔女”としての私の最後のシュートは、得意の3ポイントシュートだった。


『撃て!』


そんな叫び声が聞こえる前に、ボールは私の手を離れていた。

回転しながら宙を舞うボール。

その軌跡を見ながら、私は着地した。

< 109 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop