夢みる蝶は遊飛する
私は父が、かつてプロのバスケプレイヤーを目指していたということを知っていた。
けれど父も、故障でバスケを諦めたらしい。
自分が果たせなかった夢を背負った娘までもが、自分と同じ道をたどってしまったことに失望するのは、当然だと思った。
その時の私は、次々と押し寄せる事実に心が麻痺していた。
だから、他人から見れば“たったそれだけのこと”と思われるような理由で、父が家に帰ってこなくなることの奇異さに気がつかなかった。
今なら、疑問に思う。
どうして父はそこまで、バスケに固執したのか、と。
それから父は、戻ってこない。
私が高等部へ上がる春休みに、父の署名と捺印のされた離婚届が、家に送られてきた。
それで、終わりだ。
私たち家族の幸せな日常は、あの薄い紙切れ一枚によって、永遠に壊されたのだ。
いや、違う。
私が家族の幸せを壊したのだ。
捨てられなくない、見離されたくないと怯え、自分のことしか考えなかったばかりに。
それから、私には絶望しかなかった。
けれどそれ以上の絶望を、私は知ってしまったのだ。
それは、母の死。
母は―――――・・・・・・