夢みる蝶は遊飛する
その時、開いていたドアから、柏木さんがひょっこりと顔を出した。
時刻は、午後4時を数分過ぎたところだった。
「みんなに、今からマネージャー連れて来るって言ってきた! 待ってるから、行こう」
軽く頷いて、鞄を持って教室を後にした。
私が一瞬前までいた空間は、ひどく空気がよどんでいるように感じられた。
「みんなすっごく喜んでたよ。マネージャーがいるなんて、他の部に自慢できるって」
「そんなに、期待しないで。それと昨日言ったこと、忘れないでね」
あの条件のことだ。
私がただひとつだけ出した、あの条件。
「わかってるって。高橋さん失いたくないからね」
柏木さんの足取りは軽く、今にも飛んでいってしまいそうだった。
ふたつに結わえた髪が、鎖骨の少し下で楽しげに揺れていた。