夢みる蝶は遊飛する

私は“家族”というものに憧れていた。

幼少期の経験から、家族というものは当たり前にある存在などではなく、儚く尊いものだと知っていた。

だからこそ、家族のことを厭わしく思うということが、できなかった。

たとえ“バスケをしている私”だけを両親が愛していたのだとしても、構わなかった。

バスケをしていたときはたしかに、私は愛されていたのだから。


家庭崩壊というのだろうか。

その後の私と母の間には、ほとんど会話はなくなった。

その日以来、責められもしなくなった。

ただただ怖かった。

また施設に戻されるのではないかと。

一緒にいられなくなるのではないかと思うと、怖くて仕方なかった。



その後、父がどこでどのように過ごしていたかを、私は知らない。

調べればわかることだろうけれど、私はそうしなかった。

たぶん、母も。

きっと私たちは、父が自らの意思で帰ってきてほしいと望んでいたのだろう。

< 327 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop