夢みる蝶は遊飛する
「あいつらが気づくまで、絶対に内緒にしてね!」
沙世はそう、何度も私に念を押した。
チョコレートプレートを買い直す時間はなかったし、書き直すこともできなかったため、結局そのままになってしまったのだ。
組み立てた箱にそっとケーキを納め、甘い香りをいっぱいに吸い込んでから、蓋を閉じた。
どちらがケーキの入った箱を持って行くかを話し合い、それだけは私がすることになった。
私はケーキ作りでなんの役にも立てていないし、沙世の履くブーツはヒールが10センチ近くあるものだったため、転ぶ可能性も考えて私が挙手をした。
「っていうかこのブーツ履き慣れてるし、転んだことないんだけど。そんなドジじゃないわよ、あたし。亜美じゃあるまいし」
「私だってそんなに転ばないんだけど」
「いーや、あんたはどっか抜けてるから、なにもないところで転ぶタイプね」
絶対そう、と沙世は自信を持って言い切った。
どうやら不器用すぎるということで、沙世の私に対するイメージが変わってしまったらしい。
いつかきっと見返そうと心に決めた。