夢みる蝶は遊飛する

「ずるくなることも、今のあなたには必要だと思うわ。大抵の人間は、ずるをしながら生きてるの。自分では気づいてないかもしれないけどね」

「先生も、ですか?」


保冷剤をずらして、じっと見つめる。

先生は悪戯っぽく笑って、当たり前じゃない、と言った。


「もしかしたらずるい大人代表かもしれないわ」

「そんなに・・・・?」


そんなことを話しながら、ふと思った。

前にも似たようなことを言われたことがある。


あれは、私が初めて保健室に来た、二学期の終業式の日。

沙世が私の家に来て、私がやっと自分のことを許せた、あの日。


沙世は私に言ったのだ。

真っ直ぐ進むことだけが正しいのではないと。

逃げることもまた、選択肢のひとつなのだと。


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