夢みる蝶は遊飛する
翌日、登校した私は自分の教室に鞄を置くと、必要なものだけを持ってそこを出た。
ふたつ離れた教室の戸口に立って、中を見回す。
すると、扉からすぐの席にヒロくんが座っていた。
「おはよー」
「おはよう。桜井くんってもう来てる?」
ちょっと待ってて、と言われた数十秒後、桜井くんが現れた。
どことなく気まずそうなその顔を見て、私は自分だけ問題を解決して清々しい気分に浸っていたことに気づいた。
あの場から私が逃げ出して、その後どうなったのか。
わからないけれど、その場を収めたのは桜井くんだろう。
大会が目前に迫ったこんな時期に、チームの中心となる部員が怪我をし出場不可能になるだけでも、彼には相当な負担がかかる。
さらに、他の部員がそのことを責めるというしてはならない行為をした上に、止めようとしたマネージャーともども喧嘩腰になり、空気を乱してしまった。
それなのに、昨日の私は保健室での出来事に気を取られ、桜井くんになにも言わないまま次の日になってしまった。
本題よりも先に、まずそのことを謝ろうと口を開いた。