旦那様は社長 *②巻*
なぜウソをつく……?
隠す理由が分からない。
隠さなければならない事情があるのか?
『元婚約者と会っていた』と、素直に言えばいいだけのことなのに。
オレにだって隠し子疑惑があって随分と光姫を悩ませ、苦しい思いをさせた。
今度は、オレが苦しんだっていいはずだろう?
公私混同なんてしないから。
慎也の秘書である佐倉と毎日会社で顔をあわせることになっても、光姫に笑いかけているところを見たとしても、全部耐えてやる。
『過去の男』なんだと、心の中だけで醜くてカッコ悪い自分と葛藤してやる。
そんな自分に負けそうになった時は、ところ構わず光姫を抱きしめてしまうかもしれないけど……。
だけど光姫は隠した。
意味はないと思いたいのに、あの抱き合っていた光景が、何か意味を持つものに思えてくる。
まさか……
佐倉とヨリを戻すようなことに?
『ホテルの前で、佐倉と抱き合っていたのはどういうわけだ!!』
この言葉が喉の奥から出かけて、唇を噛んで耐えた。
言ってしまったら、何もかも終わってしまうような気がしたから。
光姫が、スルリとオレの腕をすり抜けてどこかへ行ってしまうような気がしたから。