旦那様は社長 *②巻*
「昔の男ですか……」
「ええ」
あんなに溺愛している妻の昔の恋人。
例え過去の話だとしても、この男は割りきることができるだろうか。
「……想像できませんね」
「それはどういう意味で?」
「んー……こんなこと言うと最低な自惚れ男だと思われるかもしれませんが、美海は何もかも、オレが初めてな女なんです」
「はッ!?」
「男と付き合ったのもキスをしたのも、それ以上のコトをしたのも。美海にとってはオレだけなんです」
つまりこの男は、何の苦労もしたことがないということだろうか。
「じゃあ、あなたも……彼女だけ?」
『同じ匂いがする』と言っていたさっきの言葉は、女のことも含め……なのかと思っていたのに。
「いえ……。もしそうだったなら、美海を苦しめずにすんだでしょうね」
目を閉じて囁くように発されたその言葉で、一條夫妻の過去が少しだけ見えた気がした。
そうか……
今のオレの気持ちを理解できるのは、むしろ美海さんの方なのかもしれない。
別に答えを求めたかったわけじゃない。
もうこれ以上この話を膨らませる必要はないと思って、話題をそらそうとした時だった。
「……だからこそ、毎日が不安でしかたがありませんよ」