旦那様は社長 *②巻*

「不安?」


まさか一條社長の口から『不安』という言葉を聞くとは思わず、驚いた。


「生涯、あなた一筋の奥様が側にいるのに?」


「はは。生涯……とは限りませんよ」


「え?」


「確かに今まではそうだったかもしれない。……だけど、未来は分からない」


グラスを持つ彼の手に、ギュッと力が加わったのが分かった。

彼も、何かに怯えている……?


「この先、どんないい男が美海の前に現れるか分からない。……いつ、美海の心を奪われるか」


「大丈夫でしょう。あんなに想い合っているんですから」


「『絶対』なんて、この世に存在しませんよ」


「……」


「美海は他の男を知らない。だからこそ怖いんですよ。……いつかそのことを不安に思う日がくるんじゃないかって」


一條社長のことを『何の苦労もしたことがない』と、一瞬でも心に思ったことを取り消したい。

逆にオレは、光姫の過去も全部独り占めできればいいと、これまで何度も思ってきたのに。


相手を愛おしいと強く思う気持ちには、いつどんな状況であっても底知れない不安がつきまとうんだということを、今初めて知った。


人の感情は、毎日必ず変化していくものだから。

昨日と今日も、今日と明日も全部違う。

それが良いふうになるのか、悪いふうになるのか、誰にも予測できない。


恋愛なんて特に、予測不可能な感情だと思う。

だからこそ難しくて、こんなに悩んだり苦しんだりするのかもしれない。


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