旦那様は社長 *②巻*
一時の沈黙の後、一條社長は目を閉じて天を仰いだ。
おそらく今オレに話した不安を、今まで言葉にしたことはなかったんだろう。
やっぱり、オレたちは似ているかもしれない。
少し……いや、かなり不器用なところが。
『好きだ』とか『愛してる』とか、気持ちを表す言葉は心からの想いと、不安の現れ。
この溢れんばかりの想いが、一方通行でないことを確認したいという、男の弱さでもある。
オレも一條社長も、妻に溺れすぎて失うことが怖いんだ。
「……で?奥様の昔の恋人にお会いになったんですか?」
急に自分の話題に触れられ、思わず目を見開いた。
「早いですね、話題転換が」
「はは。もう十分カッコ悪いところはお見せしたつもりですが?」
無邪気に笑うその姿は、もうすっかりいつもの彼だった。
「失礼ですが、あなたの奥様ほど美しければ、過去に何人恋人がいてもおかしくないですよ。あなたに自身にも、心当たりがおありでしょう?」
「ええ。……でもただの恋人なら、こんなに気にしたりしませんよ」
「どういう意味ですか?」
「光姫が過去にたった1人、本気で愛して将来の約束までした相手です。……その彼が、さきほどお相手していた藤堂の秘書として……今、同じ職場にいるんです」