旦那様は社長 *②巻*
光姫が初めてオレに、婚約者が過去にいたことを告白してくれた時の顔は、今思い出しても胸が痛む。
たくさん泣いて……
たくさん不安を口にして……
オレが離れていくのが怖いと、何度も震える唇で言った。
婚約者に突然捨てられたことがトラウマになり、それから誰も信じられず、本気で人を好きになれなかったということも。
何年も引きずってしまうくらい本気で愛した男なんだと、言葉にしなくてもイヤというほど伝わってきた。
「元婚約者ですか。……なるほど、不安になるはずですね……それは」
「ええ」
「だけど、過去は過去じゃないですか。今、光姫さんは間違いなくあなたの奥様なんですから」
「……その自信もなくしてしまいました」
また蘇ってくる。
あの日見た、2人が抱き合っているシーンが頭の中で何度もリプレイされる。
なぜ?
戸惑いの感情しか残らない。
「何かあったんですか?」
「……」
さすがに言えなかった。
あの日この目で見たことを。
男としてのプライドが、オレの口を封じた。
そんなオレをジッと見つめていた一條社長は、きっと何かを察したんだろう。
それ以上は追求せず、ゆっくり穏やかな口調で語り始めた。
「見たもの全てが、真実だというわけではありませんよ?」