旦那様は社長 *②巻*
病院へ着くと、悠河が助手席に回ってドアを開け、手を差しのべてくれた。
「抱っこしてやろうか?」
その手をとった瞬間、いつものようにニヤッと笑いながら言った悠河。
「けっこうです!!」
それが優しさだって分かってるよ。
ギュッときつく手を握りあって病院の中へ入った。
「ありがとう。……悠河」
「なにが?」
「分かってるくせに……」
少し微笑んだように見えた横顔。
「ありがとう。……側にいてくれて」
この後も、あたしは悠河を笑顔にしてあげられるかな。
守れるかな……
大切な人の笑顔を。
産婦人科にたどり着いた途端、あたしと悠河は顔を見合わせて苦笑いをした。
「おはよう。悠河くん、光姫さん」
いったいいつからそこにいたんだろう?
待ちきれなかったのか、佐伯先生が診察室の外であたしたちを出迎えてくれた。
「先生、あたしたちが来ないと思ってました?」
先生は少し気まずそうに一瞬目を伏せ、
「行きましょうか」
と診察室のドアを開けた。