旦那様は社長 *②巻*

病院へ着くと、悠河が助手席に回ってドアを開け、手を差しのべてくれた。


「抱っこしてやろうか?」


その手をとった瞬間、いつものようにニヤッと笑いながら言った悠河。


「けっこうです!!」


それが優しさだって分かってるよ。


ギュッときつく手を握りあって病院の中へ入った。


「ありがとう。……悠河」

「なにが?」

「分かってるくせに……」


少し微笑んだように見えた横顔。


「ありがとう。……側にいてくれて」


この後も、あたしは悠河を笑顔にしてあげられるかな。


守れるかな……

大切な人の笑顔を。



産婦人科にたどり着いた途端、あたしと悠河は顔を見合わせて苦笑いをした。


「おはよう。悠河くん、光姫さん」


いったいいつからそこにいたんだろう?


待ちきれなかったのか、佐伯先生が診察室の外であたしたちを出迎えてくれた。


「先生、あたしたちが来ないと思ってました?」


先生は少し気まずそうに一瞬目を伏せ、

「行きましょうか」

と診察室のドアを開けた。


< 314 / 409 >

この作品をシェア

pagetop