愛ノアイサツ
全ての曲を弾き終わりアンコールにも応えてようやく一礼したとき、その姿が目に飛び込んできた。
なんでここにいるんだ------
驚きのあまり僕はその場に固まってしまった。ちょうど僕の目の前の席、ステージよりも低い最前列にあの子がいた。零れ落ちそうなまん丸な目を僕に向けて、たくさんの拍手に交じって手を叩いている。僕はたくさんいる観客のことなんかすっかり忘れて、まるでその場に僕とあの子が二人きりでいるみたいな感覚になっていた。舞台袖から大きな花束を持った女性が傍に来て、ようやく我に返った。
我ここにあらず……といった感じで花束を受け取り、大きな拍手に促されステージをあとにした。
「いい出来だったじゃないか!!あの堅物の梅宮氏が思いっきり手叩いてたぜ!」
白木さんが嬉しそうに僕の肩に腕を回してきたが、今はそんなことを考えているような余裕は無かった。
だってあの子が、ずっと目の前にいた。僕の演奏を聞いていた……
次々と労いの言葉をかけてくる人達に曖昧な返事をしながら、僕は全然違うところにいた。
気付いたときには僕は会場のエントランスホールに向かって駆け出していた。周りは不思議そうな顔で見ていたが、そんなの知ったことか。
今行けばあの子に会えるかもしれない。そんな期待と不安がごちゃごちゃになったような気持ちで入口への扉を開いた。
そこは演奏を聞き終えた客でごった返していた。流れるような人の中にあの子の姿を探す。
いた………
あの子らしき後ろ姿を見つけて扉から一歩踏み出したとき
「おい、何してんだ!」
後ろから肩をつかまれ強制的に戻されてしまった。目で追っていたあの子の後ろ姿は人混みに紛れてもう見えない。内心イライラとしながら振り向くと青筋を立てた白木さんがいた。
「お前があんなとこ出たら客が群がってくるだろうが!」
白木さんはブツブツと小言を言いながら、結局控え室に戻されあの子に会うことは出来なかった。
でも僕の中ではもう決めていた。
明日、仮病でもなんでも使ってあの子に会いに行くんだ……
なんでここにいるんだ------
驚きのあまり僕はその場に固まってしまった。ちょうど僕の目の前の席、ステージよりも低い最前列にあの子がいた。零れ落ちそうなまん丸な目を僕に向けて、たくさんの拍手に交じって手を叩いている。僕はたくさんいる観客のことなんかすっかり忘れて、まるでその場に僕とあの子が二人きりでいるみたいな感覚になっていた。舞台袖から大きな花束を持った女性が傍に来て、ようやく我に返った。
我ここにあらず……といった感じで花束を受け取り、大きな拍手に促されステージをあとにした。
「いい出来だったじゃないか!!あの堅物の梅宮氏が思いっきり手叩いてたぜ!」
白木さんが嬉しそうに僕の肩に腕を回してきたが、今はそんなことを考えているような余裕は無かった。
だってあの子が、ずっと目の前にいた。僕の演奏を聞いていた……
次々と労いの言葉をかけてくる人達に曖昧な返事をしながら、僕は全然違うところにいた。
気付いたときには僕は会場のエントランスホールに向かって駆け出していた。周りは不思議そうな顔で見ていたが、そんなの知ったことか。
今行けばあの子に会えるかもしれない。そんな期待と不安がごちゃごちゃになったような気持ちで入口への扉を開いた。
そこは演奏を聞き終えた客でごった返していた。流れるような人の中にあの子の姿を探す。
いた………
あの子らしき後ろ姿を見つけて扉から一歩踏み出したとき
「おい、何してんだ!」
後ろから肩をつかまれ強制的に戻されてしまった。目で追っていたあの子の後ろ姿は人混みに紛れてもう見えない。内心イライラとしながら振り向くと青筋を立てた白木さんがいた。
「お前があんなとこ出たら客が群がってくるだろうが!」
白木さんはブツブツと小言を言いながら、結局控え室に戻されあの子に会うことは出来なかった。
でも僕の中ではもう決めていた。
明日、仮病でもなんでも使ってあの子に会いに行くんだ……