愛ノアイサツ
ふっと目が覚めると、すでに真っ赤な夕日が顔を照らしていた。まぶしくて目を細め眠りの余韻に浸る。遠くで家路の曲が鳴っている。ここにきたのが2時過ぎだったから、2時間以上眠り込んでしまったことになる。最近疲れがたまっていたからここぞとばかりに惰眠を貪ってしまったみたいだ。

「あ、目覚めました?」

誰もいないと思っていたすぐとなりから高いトーンの声が聞こえた。驚いてそちらに顔を向けると、やはりあの時と同じ淡いグリーンの病衣を着たあの子が笑ってこちらを見ていた。

「気持ちよさそうに寝てたから、声かけられなくて。ごめんなさい、びっくりさせちゃいましたね。」

カラカラと笑うその笑顔に心臓がはねた。予想通り、やっぱりこの子はこうやって笑うんだ。

「あの・・・。」

「はい?」

少し首を傾けて僕の顔を覗き込む。そんな仕草もこの子らしい。それに律儀に僕の言葉を待ってくれる優しさもなんだかすごく魅力的に感じた。

「君、昨日のコンサートに来ていた・・・。」

そう言うと、女の子は少し表情を曇らせた。

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