愛ノアイサツ
「音がすごく澄んでいて、あんまりきれいだから演奏に引込まれちゃいました。」

「そんなに絶賛してもらえると照れるな。そうだ、今度君のために何か弾いてあげるよ。」

「え、いいんですか!?」

身を乗り出して僕をまっすぐに見つめる。そんなに見つめられるとどうしても目をそらしてしまう。

「うん。なんの曲がいい?」

「う~~~ん。」

腕を組んで眉間に皴を寄せて考えている。するとパッとこちらを見て言った。


「愛の挨拶。」


時間が止まったのかと思った。それは僕が昔から一番好きな曲。あの子との思い出の曲。

「だめ・・・ですか?」

黙ってしまった僕の顔を不安そうに覗き込む少女に僕ははっとして笑顔で答えた。

「ううん、大丈夫。いいよ。」
「わぁ!ありがとうございます。」

花のように笑う女の子を見て、今日ここに来た奇跡に感謝した。

「そうだ、君の名前は?」

奇妙なデジャブ・・・こんなこと、昔もあった気がする。

「雪乃です。早瀬雪乃って言います。」

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