愛ノアイサツ
少し落ち着いたのか、雪乃は僕の胸から顔を上げ恥ずかしそうに俯いた。

「突然泣き出したりしてごめんなさい。びっくりさせちゃいましたね……」
「僕こそごめんね。急に抱きしめたりして…」

お互いなんだか恥ずかしくなって顔を合わせられなかった。沈黙が微妙に気まずい


「あ、上着返さなきゃですよね。」

最初に口を開いたのは雪乃だった。

「部屋に置いてきちゃって、今持ってきます。」

「僕が行くよ。またここまで戻ってくるの大変だろ?」

こんなこと言って、ただ雪乃がいつもどんな生活をしているのか知りたかっただけだなんて、ちょっとずるかったかな……

「気を使わせちゃってすみません。病室8階なんですけど…」

「大丈夫だよ。」

申し訳なさそうに上目遣いで見つめられると、体の温度が一度上がった。こんな年の離れた大の大人が、まだ成人式も済ましていないような少女にこんなふうに感じるなんて変に思われるかもしれないけど、そんなこと僕にはどうでもいいことだ。


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