愛ノアイサツ
「私の部屋に誰か来るなんてすごく久しぶりです。なにも出せなくてごめんなさい。」
「そんな気を使わないで?僕こそ迷惑じゃないかな?」
「全然!あの、さっきの愛の挨拶、すっごく素敵でした。本当はもっとたくさん感じたことあったんですけど、言葉にできなくて・・・」
「いいよ、それが音楽だから。」
「え?」
「難しいことなんて考えずにただ純粋に聴けばいいんだ。きっとはじめて音楽ができたとき、人はそうやって楽しんでいたはずなんだ。ごちゃごちゃうるさい評論家はもうすでに本当の音楽なんて忘れてるんだよ。」
「城田さんがそういうなら、きっとそうなんですよね。だって、この間のコンサートで城田さんの演奏を聴いた時、本当にすごいって思ったんです。こんな演奏ができるんだって。・・・でも、今日の演奏はあの日と少し違いました。」
「違う?」
僕は不思議に思って雪乃を見た。
「コンサートのときは、ちゃんと時間通りに終わってたんです。でも、今日の演奏はなんだか一音一音がまるで生きているみたいで、聴いてるわたしまでどきどきしてきて・・・たった数分間だったと思うんですけど、あっという間に終わってたんです。今この音が流れているんだ、って強く感じたんです。あの、変なこといってごめんなさい。」
雪乃は恥ずかしそうに下を向いて最後のほうはごにょごにょとしていたが、僕はその言葉にはっとさせられた。
そうか、ずっと忘れていた。これが音楽なんだ。
僕はいつから、目の前の音から逃げていたんだろう。
「そうか、そうかもれない。」
僕はなんだか急に今までの自分が恥ずかしくなった。なにが天才ヴァイオリニストだ。こんな単純で簡単なことをいつからわすれてしまっていたんだろう。どれほどその一瞬しかない音を無駄にし、捨ててきてしまったんだろう。
「そんな気を使わないで?僕こそ迷惑じゃないかな?」
「全然!あの、さっきの愛の挨拶、すっごく素敵でした。本当はもっとたくさん感じたことあったんですけど、言葉にできなくて・・・」
「いいよ、それが音楽だから。」
「え?」
「難しいことなんて考えずにただ純粋に聴けばいいんだ。きっとはじめて音楽ができたとき、人はそうやって楽しんでいたはずなんだ。ごちゃごちゃうるさい評論家はもうすでに本当の音楽なんて忘れてるんだよ。」
「城田さんがそういうなら、きっとそうなんですよね。だって、この間のコンサートで城田さんの演奏を聴いた時、本当にすごいって思ったんです。こんな演奏ができるんだって。・・・でも、今日の演奏はあの日と少し違いました。」
「違う?」
僕は不思議に思って雪乃を見た。
「コンサートのときは、ちゃんと時間通りに終わってたんです。でも、今日の演奏はなんだか一音一音がまるで生きているみたいで、聴いてるわたしまでどきどきしてきて・・・たった数分間だったと思うんですけど、あっという間に終わってたんです。今この音が流れているんだ、って強く感じたんです。あの、変なこといってごめんなさい。」
雪乃は恥ずかしそうに下を向いて最後のほうはごにょごにょとしていたが、僕はその言葉にはっとさせられた。
そうか、ずっと忘れていた。これが音楽なんだ。
僕はいつから、目の前の音から逃げていたんだろう。
「そうか、そうかもれない。」
僕はなんだか急に今までの自分が恥ずかしくなった。なにが天才ヴァイオリニストだ。こんな単純で簡単なことをいつからわすれてしまっていたんだろう。どれほどその一瞬しかない音を無駄にし、捨ててきてしまったんだろう。