捨て猫

教室に戻ると、噂はクラス中に広まっていた。
｢里那ぁ、どういうことなのっ｣
クラスの女子が詰め寄る。
｢え…いや…｣

それにしても、先輩がこんなにみんなの憧れの的だとは知らなかった。

｢…ま、あたしには和真がいるからいいけどねっ｣
｢私だって駿がいるし～｣
｢あたしの裕也先輩とらないでよね｣
そうはいってもうちのクラスの女子の大半は彼氏持ち。
いつしか話は彼氏自慢へ。

あたしはそのすきに抜け出し、桃子のもとへ逃げる。
｢桃子助けて…｣
｢おかえり～。あたしだって、里那が行っちゃってから大変だったんだから｣
｢そっかぁ…ごめん｣
｢それはいいんだけどさ～、やっぱ隼人先輩の人気半端ないよね｣
｢当たり前っしょ!だって最高だもーん♥｣
｢あれ?里那ってばいつの間にか隼人先輩にぞっこんだね｣
｢へへへ｣

本当に桃子の言うとおり、自分でもビックリするくらいあたしは先輩に惚れていた。
その気持ちは、時間を追うごとに、先輩のことを考えれば考えるほど加速していった。