世界の説明書
警官の名は、長谷川といった。公園近くの小さな派出所に勤務していた。明子が死んだ日にに最初に公衆トイレに駆けつけた警官だが、あの事件以来、あの明子のレイプされ、下半身をあらわにした死体を見た日から、彼の心の中に、ある一つの変化が生まれた。犯され、惨殺された死体を触ったあの日、彼は自分の着ている制服の力をしった。死体に触れれる。死体を眺められる。死んだ女の下半身をじっくり見渡せる。それを平然と許す社会、許される立場にいる自分、全てが愉快だった。今までなんの大きな事件にもかかわった事も無く、ホームレスと酔っ払いのケンカの仲裁ぐらいにしか役に立たないと思っていた制服が今は、王の羽衣のように感じる。自分は全てが許される人間。何をしてもいい、法の番人。自分が世界の法律で、世界は自分に従う。長谷川は壊れた。良いこと、悪いこと、それは自分が決める事。誰にも文句を言われず、束縛をされずに、縦横無人に駆け抜ける事ができる。普段は静かで、近所のスーパーのレジのおばちゃんにすら起こられるような自分が、制服をきれば、まるでスーパーマンの様に人々の安全を守っている。正義のヒーローの正体は誰にも分からない。長谷川は派出所に戻ると暗い視線を眼鏡越しに暑さでゆがんだ道に向けては、にやけていた。次にあの女子高生にあったら、説教してやらなければいけないなと思った。言葉で言って聞かないなら、体で教えるべきだ。自分が正しい道に導かなくてはいけない。そうしなければあの子は道を誤る。自分が守らなければと、長谷川は固くなった股間をいじりながら、拳銃を壁にはってある市役所のポスターの茶髪のイメージガールの股間に向けた。母さん、僕は出来るよ。全ての女を幸せにする力がこの服にはあるから見ていてねと、何年も前に過労で死んだ母親に向けて唱えた。