世界の説明書
 あの死んだ女の股座がずっと彼に、寂しい、寂しいと夢の中で訴えてきた。顔はぐちゃぐちゃで表情は分からなかったが、あんなに股を開いて死んでるなんて、なんて破廉恥なんだ、だめじゃないかあんな所で、あんな事をして、と夢の中で彼は興奮しながら正論を吐こうとしていた。正しい事を発する気持ちよさが、やってはいけない事をするスリルと混ざり、皮肉が交差し、自己嫌悪と自己陶酔が胃の下から昇ってきた。拒絶は期待感の裏返しとなり、正論は焦らしのヒーローに成り下がった。夢の中で長谷川は、その顔がぐちゃぐちゃな死体の顔を殴りつけながら、固くなった女性器に自らの硬くなった男性器を突き立てていた。なんでこの女は、自分にこんな事をやらせるのか、だめじゃないか、破廉恥じゃないか、涙を流しながら、彼はそのまま果てた。目が覚めると、彼は派出所の仮眠室で夢精していた。最近こんな夢ばっかり見ていた。それでも彼は幸せだった。新しい自分に目覚めた事への満足感が彼を支配していた。正常な人間なんてこの世界にはもうすでにいなくなっていた。眠い目をこすりながらタバコに火を付け、ふと外を見れば、脂ぎった少年の真っ黒な瞳がこちら側を覗いていた。
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