世界の説明書
 何をいっているのか、僕には分らなかったが、そのどこを見ているか分からない警官はそのまま立ち去っていった。僕は二郎の後を追ってその建物の中に入っていった。
 中に入ると、手前の左側に小さな灰色の鉄製の机があり、右側には黒い革張りの中に何も入っていないクッションがのったパイプ椅子が2つ折りたたまれていた。蛍光灯の明かりが無機質に全てを清潔に見せていた。建物の中は思ったより広く、1メートルほどの幅の廊下を2,三メートル奥に行くと、四畳ほどの仮眠室にでた。二郎は、そこで長谷川と二郎が持ってきたビデオを見ていた。テレビの中では、目の前の男と同じような青い服を着ている男のの後姿が映っており、隣の便所で女の子を後ろからかくかく押している中年男性の姿も映っている。たまに青い服を着ている者の横顔が見え、目の前の彼だと気づいた。しばらくすると、そわそわしていた三人の人間が急に静かになり、ばらばらに画面から消えていった。それを見終わった長谷川はわなわな震えだし、そして何かを言おうとするも何も言葉が見つからない事にいらだっている様だった。次郎は彼の横で先ほどよりも大分冷静に、へらへらすることなく、ただじっと警官の横顔を視線で舐めまわしていた。すると二郎が彼の耳元で、何かをささやきだした。5分はささやいていただろうか、それが終わると警官は、少し安心したような顔をして、静かにうなずいた。本当にそんな事でいいのかと再度確認するかのように、長谷川は二郎の顔をもう一度見た。二郎は深く頷き、彼の左肩に次郎の右手を置いて、祈るように力を込めた。長谷川の肩は、二郎の想像していたのよりも硬く、熱かった。そして、その場を後にした。僕も一緒に外へ出て行った。

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