世界の説明書

「頭に負った怪我が原因だと思われます。大分出血していたのも、その、原因のひ一つかも知れません、一時的なものか、一生続くものかはまだ、判りません。」

　そこまで話すと、医師はさらに、一呼吸おいた。、両親へ話さなければならない事実の重さに彼らが耐えられるのかを推し量るように二人を見つめて静かに話を続けた。

「名子ちゃんは、光を失いました。　目が見えなくなってしまったのです。　あれだけの事故でこの程度の傷で済んで良かったなんて思えないかもしれませんが、すでに一人は亡くなっています。どうか、つらく考えないでください。命は助かったのですから。　お父さん、お母さん、名子ちゃんにとって今までも、これからも、あなた達が全てです。希望を無くさないでください。しっかり、強い気持ちを持ってください。私達も出来る限りの事をします、共にがんばっていくしかないのです。神様はこの子を生かせてくれました。この子の為に我々は全力を尽くしました。　だから、どうか、お母さん、お父さん、、」

「ああああ、、、、」医者が話し終わらない内に明子の精神は忍耐の限界を超えた。

「なんて事なの、今日はこの子が楽しみにしていたお絵かき教室にいくはずだったのに、もう、この子には私達も見えない、大好きなお絵かきも出来ない、ケン君の顔も見れない、テレビも、絵本も、なんで、なんでなの、この子が一体何をしたの、なんで、なんでなの、　私が目を離したのがいけなかったんだわ、私のせいよ、私が、私が、この子の目を、私が、、、神様、、なんで、、、なんでなの、、ああ、、」

　明子は深い自責の穴に落ちて行った。激しい嗚咽が彼女の指の間から零れた。