世界の説明書
開放



 相手の人間の事が少しでも解っていると、案外、会話は上手く進むものだ。お互いの事を知っているのならなおさらだ。お互いに対し尊敬と容認さえ持ち得さえすれば、会話の中で無理に自己をさらけ出す必要も無い。会話の中で弱者、強者を決定しなければ気が済まぬという思春期真っ盛りの青臭いウンチクは消えうせ、純粋に同じ時を楽しむ事に没頭できる。ある著名な先生の詩集の中で、先生はこうおっしゃっていた。

言葉などいらぬのだ、友情と敵意をごちゃ混ぜにするくらいなら

 彼は、彼のすぐ目の前を歩いている十代後半の女子高生達の浅はかな会話に、上面だけの友情を、寂しさが繋ぎとめている関係に唾を吐きかけてやりたくなった。赤い夕闇が包む繁華街から一本裏に入った路地は、既に夜の闇が充満していた。

「うそ、マジで、超やばくね。てか、なってなくね。最近。」

「ない、ない、ないマジない。コーラ超飲みてぇー。」

「マジ飲みてぇーー。あ、ヤバメンだ、やべ、あいつぜってぇーないっしょ。」


「あれ、嘘っしょ、あいつゼッテーちげーっしょ。」

 何かを感じて二人の少女が後ろを振り返った。
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