世界の説明書
 「泣かないで坊や。お願いだから、もう自分を責めるのを辞めなさい。人は目に見える物を信じ、それを大切にするの。だって目に見える事実が一番安心できるから。。でも、目に見える物は時に残酷でしょう。人は自分の想像を超える悲しい事、怖いこと、そういったものは目に見えていても、見えなくしてしまう脳をもっている。見たくないから、目を背けてしまうの。それに自分達が関心の無い事も、見えなくなってしまうの。見る必要が無い物も自然と彼らの視界から消えてしまうの。だから、私達はずっと無視されてきた。あなたのパパはあなたに似て人が好きだった。だから、山を抜け出して、街へでて、 夜、一人誰も知らないところで、車に、、、   だから、彼等に近づいてはいけないとあれ程、何度も言ってきたでしょう。近づけばお互いにとって良くない事が起きるの。そういう運命なの。私達は彼らの運命の仲間はずれだから、無理に仲間になろうとすると運命は偶然を使い私達と彼らの間に悲しみを創り、それが私達と彼等をさらに引き離していくの。誰の力でもどうにも出来ない大きな力が、私達を守り、そして、傷つける。分かったでしょう。」

「ママ、ママ、もう分かったから、僕にはこの世界でたくさん気を付けなくちゃいけない事があるんでしょう。でも、僕はパパを見た事が無いけど、知っている。感じていた。今でも、感じているし、いつかまた会えるって信じている。ママもそうでしょう。」

「そうよ、パパはあなたを愛していたし、ママもパパを今だって愛しているわ。そして、あなたには分かって欲しいの、人は目に見えない物を無視して生きていく生き物なの、昔はね、もっと感覚で感じたり、心の目で物事を見たり出来たみたいだけど、今の人はね、そういう力を失ってしまったの。だから、私達は、人と関わりを持てなくなってしまったの。 あなたにぶつかった少女はあなたの事が全く見えていなかったんですもの。」

「うん、知ってるよ。だから僕はいつも一人で遊んでるんじゃないか、ずっと、ずっと一人でさ、、、」

「坊や、、、あなたは一人じゃないでしょう。」

「うん、、、ママ ごめんなさい。」
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