世界の説明書
 「でも、お外には一人で出かけられないよ。だって、道が見えないし、車が来ても見えない、いきなり川に落っこちちゃうかもしれないし、ケン君ともう公園の砂場でお山だって作れないもん。神様なんて何処にいるのか知らないし。」


「そうね、まだ、一人で外には行けないけど、お山は作れるわ。名子には立派な手足があるでしょ、手で触って大きな山、小さな山、ボールだって触ったら解るでしょう。」

「うん、分かる、ご飯食べる時も、匂いで卵焼きだって分かるもん。ケン君が来たら声で分かるもん。パパが帰ってきたら音で分かるもん。」

「ほらね、あなたは見えているの、ただ、目で見ていないだけ、きっとあなたは他の人よりたくさんの物が見えているのよ。ママには分かるの。だから、あんまり黙り込んだりしないでね。ママは心配になるからね。してほしい事があったら何でも言いなさい。でもあんまりわがままばっかは嫌ですよ。」

「本当?やったあ。じゃ今日は北風と太陽のお話読んでね。ね、絶対だよ、名子が寝る前にちゃんと呼んでよ。」

「はいはい、分かったわよ、約束ね。あ、ほらもうすぐケン君が遊びに来る時間だから、ちょっとおめかししましょうね」
< 18 / 200 >

この作品をシェア

pagetop